悲しい目をしたマユゲ犬2.0

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チャールズ・サイフェ「異端の数ゼロ――数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念」(文庫版)

読了。
異端の数ゼロ――数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念 (ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ)ISBN:4150503494
素晴らしい本。ゼロがもたらす学問の歴史上の様々な問題を時系列毎に非常にわかりやすく、且つ面白く記述してくれる優れた本です。高校の数学・物理が少し頭に入っていると充分楽しめますし(ただし後半は高校範囲を少し逸脱しますが)、そうでない人も本書では数式を殆ど用いない、わかりやすい例と解説によって納得出来ます。そもそもある程度の学術書でありながら専門知識をあまり必要としない、読み物としての側面が強いので堅苦しさはありません。多少ぶつ切れの文章で、訳が少し不自然な部分もありますが、原文がそうなのかもしれないので特に言及はしません。
内容は単に数学・物理学だけでなく、芸術・神学・哲学など話題は多岐にわたり、そこにゼロの問題や不思議が潜んでいることを示唆してくれます。中学・高校の授業での無味乾燥な内容よりも遥かに興味を持たせる話題の振り方・展開の仕方なので、最後まで一気に読める名著と個人的に思っています。四大文明の時代から話は始まり、終盤はひも理論など比較的新しい話題も盛り込まれており、他にもアルキメデスの時代で既に微積分の寸前まで到達していたことや、ゼロと宗教(とりわけキリスト教)との関係、16世紀で既に虚数複素数の考えがあったことなど、学校では教わらない驚愕の事実が満載。人類とゼロとの戦いは未だ終結していません。こんな本を高校生の時に読みたかった……。