悲しい目をしたマユゲ犬2.0

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西尾維新「化物語 下」

読了。
化物語(下) (講談社BOX)ASIN:4062836076
上巻以上とも思える相変わらずの漫才っぷりに抱腹絶倒しました。でも締めるところはちゃんと締めましたね。猫のエピソードが敢えて最後に持ってこられたのも納得がいくというものです。
本作シリーズは「怪異」がテーマですが、本来妖怪などの異形の存在は人が作り出したもの、人の意識化に存在するもの、すなわち人の存在を前提にして存在を許されているが実在はしないとされるのが本来の怪異ですが、本作では怪異というものが人とは別個独立して実在しているところが異なる点です。しかし本作では、その怪異も人によって忌まれたり崇めたれたりと人によって願われ、且つある意味奉られなければ存在が存在たらしめられない、そして人と馴れ馴れしくするべき存在ではない、と怪異側から人へ警告ともとれる示唆があります。すなわち、本来の怪異も本作での怪異も、どちらも人によって願われ、且つ畏敬の念(=距離をおく)がなければ存在しにくいことが共通しています。科学万能神話がまかり通る現代では、民間伝承など古くからの怪異は姿を消しつつあります。願われなくなった怪異は消えるのみ。科学の光による闇の駆逐は人の心から何かを失わせている面もあるように思えてなりません。怪異はただ在るのみ、それだけでよかったはずなのに、その存在すらも消失しようとしている現代の精神的貧しさは怪異からの警鐘ととるべきでしょうか。
とかなんとか勝手にシリアスに思ってみたり。もっとも、この作品は西尾維新節の漫才を楽しむものだと思っているので、読んでいる最中こんなこと考える必要など微塵もありゃしません。純粋に楽しんで読みましょう。