悲しい目をしたマユゲ犬2.0

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レオノール・フィニ展

見てきました。スタイルとしてはシュールレアリスムの女流画家ということですが、確かに展示された作品群は心象風景のような抽象的な絵を確かな筆致で描くデ・キリコのような画風が多かったです。ただ、キリコの絵は風景が主に描かれているイメージが強いですが、フィニの絵は人物を主体に描かれるものが多く、女性ならではの性に対するイメージというか、エロティシズムを元に描かれた作品も多く残っていました。画家にしては珍しく、生涯通して激変と呼べるような作風の変化はあまりなく*1シュールレアリスムの画家として通したようです。画家本人はシュールレアリスムと言われるのは嫌がったらしいですが。他にも絵だけでなく自ら小説を書いたりバレエや映画などの衣装デザインを手がけたりと、活動の幅は広かったようです。私見では画壇の評価よりも商業的評価の方が高そうに感じましたが*2シュールレアリスムの一端を担った女流画家の作品として、また、女性ならではの感性が滲み出た作品も多いですから、一度は見てみるのもいいでしょう。
フィニは20世紀の女流画家ですが、女性がようやく絵画の世界にも踏み込めるようになった時代だからこそ生まれたのだと思います。20世紀以前で活躍した女流画家を挙げよと言われても大抵の人は中々挙げられないのではないでしょうか。それは音楽も同じで遍く有名な作曲家は全て男性であることから、芸術面におけるある種の男尊女卑が存在した*3ことが自ずと判ると思います。時代が女性であることを許さなかった不幸な時代が続いたのですね。そう考えると今は、芸術の世界における女性の立場という意味では良い時代だと思います。
フィニ展を見た後帰りにミュシャの来年のカレンダーを買って帰りました。今年あったミュシャ展には見に行く直前に食中毒という名誉の負傷不運のせいで行けなかったので。行きたかったようわーん。まああとでstein姐さんからミュシャ展のカタログ(?)を見せてもらいましたけど、やっぱり実物を見たかったです。また来ないかなぁ。

*1:中期にフィニの歴史で言うところの「鉱物の時代」というデカルコマニーを用いた急激な変化の時期もあったが、また元のスタイルに戻る

*2:あくまで私見ですよ。絵画だけに留まらない活動があったということは、その他の分野で活躍するためのコネがあったという一種の政治力がフィニにあったわけですから

*3:近代まではキリスト教の聖歌隊でさえ女性の参加は許されなかったという、宗教にまで男尊女卑が存在した