悲しい目をしたマユゲ犬2.0

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西尾維新「ネコソギラジカル(下)青色サヴァンと戯言遣い」

ネコソギラジカル(下)青色サヴァンと戯言遣い (講談社ノベルス)asin:4061824007
とうとう終わってしまいました。戯言シリーズの始めの頃はミステリ風味、いつの間にか超人バトル小説に様変わりしていましたが、その根底に流れているのは主人公が仲間・友情・愛に悩む青臭いことこの上ない、いつぞやの帯の文句である「青春エンタ」であるように今になって思います。
所謂「セカイ系」の代表の如く語られることが多いですが、確かに戯言シリーズは回を重ねるごとにその色合いを強く表していきます。それは尽く主人公の悩みと葛藤であり、それを彩るのは天才鬼才の異形の者たちで、彼らにより主人公の悩みが及ぼす本来ならばちっぽけな影響が過剰というのはあまりにも過剰に深刻さを伴って演出され、挙句の果てには「世界の終わり」を語りだす者まで現れる、というところまで発展してきますが、最終巻である本作で主人公は、読者の誰もが思ったであろう、たかだか日本の中でたかだか十数人があれこれと画策するだけで「世界の終わり」なんて齎されるのだろうか、という疑問にばっさりと答え、斬り捨てます。読んだときは提唱させた作者がそれを自ら言うなんて正直反則だと思いましたが(笑)、それはむしろその疑問の回答があらかじめ用意された上で「世界の終わり」なんて演出過剰な言葉を使用&多用したのではないか、なんて私は思いました。作者がそれを意図したかどうかなんてわかりませんが、主人公の回答は「セカイ系」でありながら「セカイ系」に相反する世界を持ち込んだのかなとも感じられます。穿ちすぎですか(笑)。
結局のところ戯言シリーズはまとめてしまえば「ぼく(=主人公)は生きる。仲間を守り大切にするんだ」というその一言に尋常ならざる紆余曲折を経て集約されてしまうわけですが、そのまとめに対し最後は奇を衒わずハッピーエンドにしたのは(賛否両論あると思いますが)私は良かったと思います。物語のすべてが語られたわけではありませんが、それはあくまで末節、主人公の取り巻く世界から見れば全てが丸く収まったわけです。これまでの物語の悲喜交々を交えながら最後に裏表紙を見ると、感慨深いというには余りあるくらいの感慨がありますねー。あの裏表紙が読者の妄想を否が応でも膨らませられます(笑)。
読者としては総じて一言、ご苦労様でした。そしてありがとうございました。