悲しい目をしたマユゲ犬2.0

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谷川流「絶望系 閉じられた世界」

読了。直接的なネタバレは書きません。
絶望系 閉じられた世界 (電撃文庫 1078)ISBN:4840230218
エロ&グロ(エログロとは違う)。セカイ系と言えばそれにあたるのかと思います。
物語という小さな閉鎖系を創り出した作者は、物語そのものが言わば箱庭であることに自覚的であるし、加えて登場人物が物語における自らの役割に対して非常に自覚的であり、彼らによる饒舌を通り越して無為無益ですらある空虚な対話を繰り返すことにより、非日常は装飾されて知らず狂気のセカイに誘い込まれ、希望など微塵もないのが本作だと勝手に解釈しました。
物語と言ってもドラマティックと言えるほど大仰なイベントはなく、正常と異常の狭間や人間の存在価値などについて、深い意味を持たない観念論がだらだらと続けられるのが主だっているので、退屈という感想も理解できますが、ここで特異なのは、登場人物の9割は人間に対して受動的にしろ能動的にしろ悪意こそあれ善意など全く存在しないという点。天使も悪魔も死神も幽霊も登場しますが、天使ですら人間という存在に対しては無価値であり救済などもたらさない、それどころか悪意さえにじませるとんでもないキャラです。美女やら幼女やらを装っていつつキャラクターそのものも突飛であり、口を開けば下ネタか毒しか出てこないようなどうしようもないダークな物語なので、表紙や挿絵に騙されると痛い目を見ます。それはもう。
人間の価値観からすると、善悪二元論で言えば悪にしか思えない事件や人物ばかりですが、人間ではない者たちから見ればそれは無価値であり無関心という超越的概念を根底に貫き通すので、読み終わってもスッキリしないこと間違いなし。涼宮ハルヒの作者とはいえ、「鬼才が送る実験作」と銘打っているので、その辺は覚悟して臨んだ方が良いでしょう。間違っても図書館などには置けそうにありません。エロいし。